競争率は天と地 職員室内の「世代」断層

公立小学校の男性教員の月収が大卒の男性労働者の何倍かをみると、岩手は1.13倍ですが、東京は0.67倍です(2013年)。岩手は教員給与が民間を上回りますが、東京は民間の7割にも達しません。

47都道府県の傾向でみても、教員給与の対民間比は、採用試験の競争率とプラスの相関関係にあります(拙著『教育の使命と実態』武蔵野大学出版会、2013年)。優秀な人材を確保するには、待遇の改善も重要ということでしょう。

しかし、教員採用試験の競争率が時期によってこうも変わることに驚かされます。和歌山では、私の世代は50倍超の競争を強いられましたが、最近の世代は3倍そこそこです。激戦世代と「ゆとり」世代が職員室で机を並べているわけですが、そのことが、教員集団内の世代断層(葛藤)をもたらしていないかどうか……。

あまり知られていませんが、一般の公務員は競争試験で選ばれるのに対し、教育公務員の採用試験は「選考」形式で実施されることになっています(教育公務員特例法第11条)。

選考とは、「『一定の基準と手続き』のもとに『学力・経験・人物・慣行・身体等』を審査すること」(『解説・教育六法2016年版』三省堂)ですから、競争試験とは異なります。基準に適う人がいなければ採用ゼロもあり得ますし、逆にそれをクリアした人がたくさんいれば、当初の予定よりも採用数が多くなることもあります。

実際のところ、教員採用試験も競争試験(機械的に上位から採る)になっていますが、こうした競争試験は、人口変動のような外的要因によって性質を大きく変えられてしまう弱さを持っています。法定されている「選考」の理念を実現するため、自治体間で採用候補者を融通し合うなどの工夫も求められるところです。