「いじめ容認度」最高は神奈川、最低は宮崎
5月も半ばですが、いかがお過ごしでしょうか。いわゆる「5月病」がはびこる時期ですが、学校の教室では別の病気が出てくる時期です。
それは「いじめ」です。
そろそろクラス内のカーストが定まり、ターゲットを決めて皆でいじめ始める、なんてことが起きてきます。大学の授業で、学生さんに学校体験レポートを書いてもらったことがありますが、「5月頃から、クラスでいじめが始まり……」という記述が数多く見られます。
「いじめのターゲットになりはしないか」
今の時期、学校の教室では、こういう不安におののいている児童・生徒も少なくないでしょう。新緑の季節ですが、教室の中は不安と緊張が渦巻く「灰色」の空間なのかもしれません。
さて、社会問題にまでなっている「いじめ」ですが、数でみてどれくらい起きているのでしょう。いじめは思春期で多発しますが、文科省の統計によると、2014年度間の中学校のいじめ認知件数は5万2971件です(『児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査』)。中学生1000人あたり15.1件。都道府県別にみると、京都の45.7件から佐賀の3.4件まで幅広く分布しています。
この値をもって、いじめの量の指標とされることが多いのですが、これはあくまで当局が認知した件数です。校内の見回りを徹底する、いじめ申告のアンケートを頻繁に行うなどすれば、数は跳ね上がります。
いじめの認知件数が多いことは、悪いことではありません。むしろ、いじめの把握に本腰を入れているという、名誉の証と読むこともできます。
いじめの量を把握するのはなかなか難しいのですが、生徒の意識に注目するのはどうでしょう。文科省の『全国学力・学習状況調査』では、「いじめは、どんな理由があってもいけない」という項目について、どう思うかと尋ねています。
全国の公立中学校3年生の回答をみると、「そう思わない」ないしは「どちらかといえば、そう思わない」と答えた生徒の割合は6.5%です(2014年度調査)。
およそ15人に1人が、いじめを容認しています。
この値を都道府県別に計算し、地図にすると図1のようになります。公立中学校3年生のいじめ容認率マップです。
いじめを容認する生徒の割合は、最高の神奈川と最低の宮崎では、倍以上違っています。濃い色の分布をみると、いじめ容認率は都市部で高いように思えます。
都市化の指標として使われる人口集中地区居住率(2010年)との相関係数を出すと、+0.5971という有意な相関関係が認められます。