すべての基準を形成したストリートファイター

【弘兼】クリエーティブな才能と経営センスは違うということですね。さらに12年度には社内の構造改革がはじまり、14年度の売上高は400億円近く減収したにもかかわらず、営業利益は増益した。売り上げを落として利益を増やすことに成功しました。

【辻本】損が出ていた部分を落として、利益のある部分だけ残した。ただそれだけの話です。

【弘兼】言うのは簡単ですが、どこを削減するか見極められなければなかなか難しいのではないでしょうか。

【辻本】カプコンはすべてデータを数値化してわかるようにしているんです。それを見ると、売上高は増えるけれど利益が少ないソフトは、下請けに出していたものばかりだとすぐにわかった。ゲーム業界というのは下請けに丸投げみたいなところがあります。たとえば、「2億円渡しますので、いいものを作ってください」と下請けに依頼する。それで下請け側が好きなように作って、「売れなければごめん」といったような具合です。

【弘兼】漫画コミックの世界ではちょっと考えられませんね。内容を見て部数を決めるでしょう。

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ゲームの7割以上は社内で製作

【辻本】普通はそうでしょう。ところがゲーム業界は違っていた。だから、カプコンは「内製率」80%を目指し、できるだけ社内でゲームを作るようにしました。11年度に約48%だった「内製率」は、14年度には約70%まで改善しました。

【弘兼】才能あるゲームクリエーターが独立しても、質の高いゲームを出し続けるためには、やはり辻本さん自身がゲームを試してみて、コントロールしているのでしょうか。

【辻本】ええ、朝から晩まで死にものぐるいでやっていますよ……、もっぱら経営というゲームのほうですがね(笑)。商品のゲームはおよそ300人からなる品質管理部という部署で、ゲームに欠陥がないか「バグチェック」をするほか、ほかの会社の同じジャンルのゲームと比較しています。そうして、試作したゲームのいいところと悪いところを30分ぐらいのDVDに落としたものが、バンバン私のところに来るわけです。

【弘兼】それをご覧になっているのですね。