基本の「型」をつくることが「資産」を生みだす
──マニュアル化すると、社員の仕事はルーティンワークになり、つまらなくなるのではないですか。
実際には、むしろ逆です。その証拠に、弊社のマニュアルは、それぞれの現場で働くスタッフたちが「こうしたほうがいい」という創造的なアイデアを出してくれるようになったおかげで、更に内容が充実してきています。
これは、基本的なマニュアルがあれば、逆に改善点や問題点が見えやすくなり、新しいアイデアが生まれるからです。そしてその発見をマニュアルの更新によって「見える化」し、共有すれば、会社の資産となります。
スポーツや芸術でもそうですが、まず最初に決まった「型」を習得して初めて「型破り」が可能になります。型がない人がやるのは「型なし」です。基本的な仕組みの存在こそが、会社の成長につながる創造性を生みだすのです。
「仕組み化」は、現場の声を吸い上げる点でも力を発揮します。弊社のヒット商品に「足なり直角靴下」があります。これはチェコ駐在員の奥さんが情報をくださって生まれた商品です。商品化するまで苦労はありましたが、こうした声を吸い上げることで、細分化する顧客のニーズに気づくことができます。
無印良品の基本的なコンセプトは非常に強いものです。日本の禅や茶道に代表される、簡素を旨とする哲学的な価値観でできています。このコンセプトを軸に時代のニーズに繊細に対応していくために「仕組み」は今後も不可欠であると考えています。
(相澤 正=撮影)