良品計画は14年前、38億円の赤字を出した。企業規模が大きくなったことで生まれるさまざまな弊害。そこで、ディスプレイからあらゆる仕事の進め方まで、微に入り細を穿つ「仕組み」づくりを徹底させたところ、劇的なV字回復が実現できたという。無印良品の「2000ページマニュアル」生みの親、良品計画会長・松井忠三氏に訊いた。
“個人経験主義”では低成長時代に勝てない
──仕組みづくりの重要性に気づいたのはいつですか。
2001年に私が社長になってからです。良品計画は1999年には売上高1066億円、経常利益133億円、「無印神話」ともてはやされましたが、その後たった2年で、赤字38億円を出してしまっていたのです。お店を閉めたり在庫を燃やしたり、いろんな手だてを講じましたが、根本的な原因が他にありそうだった。
私は「セゾン文化」と言われた独特の組織文化が、逆に足かせになっているのではないかと考えました。西友はセゾングループのひとつでしたが、セゾングループは、堤清二さんという稀代のカリスママーケッターによる感性が、大きな力となりました。その影響もあって、西友は先輩の背中を見て育つ経験主義の社風でした。この社風は良品計画でも同じでした。
しかし、経験主義は特に「守り」に弱い。たとえば、ある冬に、売り上げが落ちたとしましょう。その年が暖冬だったとしたら、経験主義だと「暖冬対策がうまくいかなかったね」ということで終わってしまう。けれども、実際には暖冬でも業績良好の企業はあるわけです。そういう会社は、暖冬でもモノを作る「仕組み」を持っています。
そこで、当時私がお手本にしたのは、しまむら。ユニクロやニトリなど、我々がライバルとしている企業も上手に利益をあげていました。