短期で勝ち逃げが必勝法

知っておきたいのが、投資期間である。NISAでは、買った年を含めて5年後の年末(15年に買った分は19年末)までが非課税になるが、翌年の非課税枠に移す「ロールオーバー」という方法をとることができ、そこからさらに5年間、非課税期間が続く。つまり、最長10年間は値上がりを待てるのだ。

もし10年を視野に入れるなら、最悪期を脱していいほうに向かっていくようなものが狙い目だ。大きな値上がりが期待できるものほど、非課税メリットが生きる。新興国でいえば、原油価格が下げ止まりしつつあるロシアや、インフレ懸念が後退しはじめているブラジルなど。ロシアの株価指数に値動きが連動するETFや、ロシア株に投資する投資信託などが候補になる。

とはいえ、遠い先のことほど予測がつきにくいので、もっと短期志向で銘柄を選び、値上がりしたら非課税メリットを受けるために、勝ち逃げすることをお勧めする。預金金利を考えれば、1~2割程度値上がりしたら売る、という感覚でいいだろう。

1~2年の短期で考えるなら、日本株や米国株で相場上昇の流れに乗りたい。

配当金も非課税になるので、高配当銘柄も悪くないが、商法改正(01年10月施行)によって、剰余金からも配当が出せるようになり、配当金と業績とが必ずしも連動しない企業も多い。「業績好調で配当を増やしている銘柄」を選ぶことが望ましい。

ちなみに、日本の総合商社は配当金が高いわりには株価が割安である。総合商社のようなビジネスモデルは海外にはなく、外国人投資家には評価が難しいため、企業価値からみると株価が割安な水準におかれやすいからである。

また銀行も最近は株主還元重視に舵を切りつつある。地銀も合併などの再編が進み、安倍政権の地方創生によって収益が上がる可能性もある。

銀行株を含め、株式の売買単位が大きな企業などでは売買に何十万円も必要になるが、銀行株に特化したETFなど、業種別のETFなら2万円程度で投資できる。複数口を買って、ある程度上がったら半分売って利益を確定させる、というのもいいだろう。

また、「子どもNISA(ジュニアNISA)」が制度化された。これは、子ども名義で親や祖父母がNISA口座を開設し、その中で株式や投資信託を売買するもの。投資可能額は年間80万円で、子どもが18歳になるまでは非課税での引き出しができない(売却は可能)。教育費づくりも投資で、という流れだ。

しかし、確定拠出年金(http://president.jp/articles/-/17224 参照)は掛け金が所得控除になるなど、運用成果にかかわらず非課税メリットを享受できるが、NISAでメリットがあるのは儲かったときだけだ。もとより、教育資金をリスク商品だけで準備するのは危険も伴うので、預金商品と併用するなどの工夫が必要である。

※図版は井戸美枝氏への取材をもとに編集部で作成

 
確定拠出年金、NISAのプロフェッショナル●深野康彦
ファイナンシャル・プランナー。クレジット会社、独立系FP会社入社を経て、ファイナンシャルリサーチ代表に。著書に『1万円から始めるETF投資』『これから生きていくために必要なお金の話を一緒にしよう!』。
(高橋晴美=構成 kou/pixta=写真)
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