さらに介護離職者が増えるのは確実
同時に、要介護1・2への生活援助サービスを外すことで大きな影響を受けるのが確実なのは、家族です。すでに大問題となっている介護離職がさらに増えるリスクがあります。
「これまではホームヘルパーの生活援助を頼ることで仕事を辞めずに済んでいた人もいました。しかしそれが介護給付から外されると、その部分を自分が担わなければならず、離職を選ばざるを得なくなるでしょう。国は介護離職者ゼロを目指すという方針を掲げながら、逆に増やす結果につながるようなことをしようとしているんです」
▼「報道されていない」介護保険適用除外も
続けてFさんは、こんな「聞き捨てならない」話をしてくれました。
「今回は報道されていませんが、実はもうひとつ、軽度者に対する保険適用除外が検討されているものがあるんです」
聞けば、その保険適用除外品というのは、介護用ベッド、車いす、スロープ、歩行器といった福祉用具の貸与や手すりをつけるといった住宅改修とのこと。このことが検討されていることは、一般の人はほとんど知りませんが、介護業界では全員が知っていて危機感を持っているそうです。
「これ(軽度者に対する保険適用除外)って普通に考えて変なんです。要介護3以上の重度者は寝たきりだったり、在宅での介護は難しくて施設に入所せざるを得なかったりという状態です。ベッドは別としても、車いすや歩行器を借りたり手すりをつけても使えなかったりする人たちです。要するに、車いすや歩行器などは、(要介護3未満の)まだなんとか立ち上がったり歩けたりする軽度者にこそ必要なもの。それを給付から除外するというんですからわけが分かりません。重度者はほとんど利用していない現状に加えて、軽度者も結果的に利用できなくなれば、介護費用を大削減できると考えているのかもしれません」
これが介護給付適用除外になると大変なことになるそうです。要介護1と2の軽度者は重度者になる前に踏ん張っている状態。手すりや歩行器の助けを借りて歩くことで状態が回復する可能性もあります。
また、介護の利便性を追求して進化した福祉用具によって家族などの介護者が助かっている部分も大きい。私も父親の介護を通して実感しましたが、電動で寝床を上下できたり、上体を起こせたりといった機能によって不慣れな介護が、無理なく、よりスムーズにできたという感覚があります。