業者の弁当を「自腹で購入しろ」が国の本音か
この改定論には、民間の業者が行っている高齢者向けの配食サービスがあるのだから、調理の援助の代わりにそちらを利用すればいい、という含みもあるようです。
配食サービスは1食500円から700円程度。高齢者向けに栄養バランスや消化の良さも考えられています。また、手渡しする、玄関先まで来るのが困難な人にはテーブルまで持って行くことを原則としている業者もあるようです。
そうすることで安否確認をし、コミュニケーションをとることで孤立も防げるというわけです。このサービス内容を聞けば、生活援助の調理より金銭的負担はやや大きくなるものの、いいこと尽くめという印象を持ちます。
「しかし、現実にはそこまで行き届いたサービスをしている業者は少ない」とFさんは言います。続けて、その理由をこう語ります。
▼理由1
「都市部では配食のクルマを停めるのが難しい場所も多い。配達する人は、できるだけ早く届けてクルマに戻りたいという意識がまずあるわけです」
▼理由2
「また、当然ドアには鍵がかかっている。チャイムを押して玄関先まで鍵を開けに来てもらわなければならず、要介護2の方には困難です。それに認知症の方もおられます」
鍵を開けてもらって食事を手渡しして安否確認、コミュニケーション、というのは理想ですが、配達の人は介護のプロではありませんし、本当はそこまで踏み込みたくないというのです。
「運営する会社だって採算ギリギリでやっていますから、そうしたサービスはできるだけしたくないというのが本音なんです。地域によっては民生委員などがボランティアで配食業者と連携して配達するケースもあるようです。民生委員なら利用者さんと信頼関係がありますから鍵を預かるなどして家に入れますし、会話を通して様子をチェックできますが、民間の業者の場合はさまざまなハードルがあって十分な配慮ができないんです」
つまり、要介護1と2の人をひとくくりにして“生活援助のかわりに配食サービスを利用すればいい”というのは乱暴過ぎるというわけです。