部下の情熱を評価すれば成果2倍に

それでは企業では、まだ活用しきれていない社員に、どのようにNot Yetの気持ちを持たせられるでしょうか?

企業では、常に結果を出すことを求められます。私が勧めるのは、成長を査定する新しい評価体系を社内につくることです。「どれくらい進歩しているか」「誰が新しいアイデアを出しているか」「誰が同僚の成長を助けているか」などの点から査定するのです。どれくらい結果を出したかということよりも、どれくらい進歩しているかということに注目をするべきなのです。その評価体系が企業内に行き渡り、進歩が報われると、より多くのイノベーションが起こるようになるでしょう。

私たちの研究グループは、今大企業のマインドセット(ものの見方)を調査しています。その中で最初にわかったことは、CEOが成長を評価するマインドセットを持っていると、社員は「会社のためにもっと貢献しよう」とより強くやる気を感じているということでした。そういう会社ではミスをしたり、リスクのある選択肢を選んだりしても、見放さず、その失敗やリスクをサポートするほうに回ってくれます。一方で、逆のパターンの企業は、固まったマインドセットを持ち、社員は失敗すると代償を払わされるため、モチベーションが下がっていくのです。

それではCEOや上司が、社員に対して何ができるのか考えてみましょう。

まず、部下に話しかけるときや社員の前でスピーチをするときに、その人の進歩や成長を評価することです。社員本人が情熱を持って担当の課題にコミットするまでは、その能力を査定することはできないのです。潜在能力は実際に情熱を持ってやってみて初めて、最大限発揮されるものなのです。やる気を起こしていない中途半端な仕事に対して評価をしても、それ以上本来の力を伸ばすことができないどころか、モチベーションを下げるだけです。

次にできることは、先述した部下の進歩や成長を、きちんと評価につなげる方法を考えることです。その人の進歩に対して、報奨する方法が重要なのです。

新しいスキルを身につけた社員やチャレンジした社員、たぐいまれなチームワークを発揮した社員などを表彰するような制度を考えるといいでしょう。これは社員の出した結果を決して無視するのではなく、その結果を成長の視点から評価することなのです。

日本人は失敗を非常に恐れると言われています。失敗したらセカンド・チャンスをなかなか与えてくれないとも言われています。それでは会社も社員も成長できません。