悪い歯医者の見分け方、教えます【後編】

患者も虫歯予防になるので嬉しいでしょうし、ヒロシもこれなら気兼ねなくお金を稼げますね。お父さんはヒロシが予防歯科に力を入れることを強く勧めます。

もちろん予防歯科が徹底すれば虫歯患者はどんどん減っていき、本当に冬の時代が訪れることになるでしょう。でも、今儲かるのなら、それが一番大事なのです。今、目の前に拾える小銭があるなら迷わず拾うべきです。身勝手なメーカーや小賢しい患者たちのせいで、われわれ歯科医は窮地に立たされているのだから、これは当然の権利です。ほかの歯科医たちも予防歯科をやり始めると、患者争奪戦になるのは目に見えていますから、ヒロシもいち早く予防歯科に手を出すべきです。何より「患者のため」という大義名分があるのが大きい。

そういえば、ヒロシは老人ホームにも治療に行っているようですね。それはお父さんも賛成です。老人の口の中は宝の山ですからね。特に老人の歯周病は治療やケアが必要なうえに死ぬまで治らないことも多い。義歯調整などこまごまとしたことでもお金を稼ぐことができます。あと、ヒロシはブラッシング指導もしていますか？　特にボケ老人へのブラッシング指導をお父さんはオススメします。いかんせんボケてるので無限に教えることができます。

お父さんもお母さんも、ヒロシが貧乏な負け組歯医者になることをとても心配しています。ですが、お父さんは余分にお金を稼ぐための巧いやり方をまだ幾つも知っています。最近では、抜いた歯を20万～30万円ほどで保存して将来iPS細胞を使って再生するベンチャー企業も出てきました。そんな技術が将来的に確立されるのか、今の保管方法で将来のその技術に適合できるのか、何もかも未知数で、お父さんは自分が患者ならやりたくないと思いますが、これも巧く利用すればお金を稼げそうな気がしています。今度うちに来たときにその辺りのことも一緒に話し合いましょう。お母さんは今度はロールキャベツを作ると張り切っています。お父さんもいつでもおまえの力になるからね。困ったことがあったらいつでも相談してくるんだよ。愛してるよ、ヒロシ。

※この話はフィクションである。多くの歯科医師は、患者のことを一心に考え、日々診療にあたっている。