事業承継は「予防」に力を入れよ!

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持株(議決権)比率により、できること・できないこと

こうしたトラブルを避けるには、親側は、自分が復権したくなる可能性があるのなら、議決権ベースで株式の過半数を保有しておく必要がある。そうすれば、引退後も取締役や社長交代が意のままだからだ。しかし、現実には、相続税対策に注力するあまり、株式の保有比率に注意が払われないケースも多いようだ。

ただ、注目したいのは、親はかならずしも過半数の株式を保有しなくてはならないわけではないということだ。

「相続税対策で、自身の保有率を半数以下にして生前贈与を進めたほうがお得というケースもあるでしょう。ただその場合も、子に譲渡する株式を無議決権株式にしたり、比重株を導入して自分の保有株式に複数の議決権を持たせるなどすれば、議決権ベースで過半数を握ることは可能です」

無議決権株式などを採用するには、会社の定款を変更する必要がある。定款変更には、株主総会で3分の2以上の賛成がいる。事業承継を進めて自己の保有株式が3分の2以下になってからでは手遅れの可能性があるので、あらかじめ対策を取ったうえで事業承継を始めることも大切だ。

「事業承継トラブルを避ける予防策はたくさんあります。ところが、うちの親子は大丈夫だと過信して対策を取らず、トラブルが起きてから裁判所に駆け込む人が少なくない。健康を過信して、病気になってから慌てて医者にかかる人と同じ。事業承継も、予防という観点を持って早い段階で弁護士に相談することをおすすめします」

(図版作成=大橋昭一)
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