領収書の「宛名」に意味はあるのか
会社の経費計算でレシートを提出したら、経理から「領収書じゃないとダメ」と言われたことのある人もいるだろう。しかし税法上、領収書とレシートは区別されていない。法的に違いがないのに、なぜレシートではなく領収書を求める会社があるのか。
領収書とレシートの最大の違いといえば、宛名の有無だろう。税理士の山田真哉氏は次のように指摘する。
「会社が領収書やレシートを提出させる理由の1つは、社員の不正請求を防ぎ、無駄な費用を減らすため。その点でいうと、わざわざ宛名を書かなければいけない領収書は、社員にとって精神的な抑止力になりえます」
たとえば明らかにファミリーで食事しているのに、領収書をもらうときお店に自社名を告げるのは躊躇するもの。宛名のないレシートでは、こうした抑止力が働きにくい。
ただ、これはあくまで「精神的な」抑止力でしかない。領収書を求められた店の側は、それが明らかに会社の費用ではないと感じても、客に言われるまま宛名を書くからだ。
しかし、最近はレジの進化により、新たな「抑止力」が現れている。
「昔の数字だけが羅列されていた時代と違い、最近のレシートは利用人数や日時、品名まで印字されます。宛名はなくても、事細かに情報が明らかにされているほうが不正請求しにくい。いまはレシートのほうが抑止力は高いはずです」(山田税理士)
細かな情報が印字されているレシートは、税務署対策にもなる。「お品代」と書かれただけの領収書より、具体的な品名が入っているレシートのほうが証拠力は高いからだ。
いまや会社にとって理想の経費精算ルールは、「原則レシート。数字だけが並んだ昔のレシートを渡されたら、領収書をもらう」。これを知らずに、いまも領収書提出を義務づけている会社は、運用ルールを見直したほうがいいだろう。