病院を離れ、どうリフレッシュできるか

それから、今年のもう一つの目標は外科医の「オフ」を充実させるために病院を離れた時間でリフレッシュして閃きを得ることです。良いチームに囲まれていれば決して24時間、365日病院のことで頭がいっぱいである必要はなく、新たな目標を持つことで自分自身の可能性を拡大することができると考えるからです。そこで何を手がけるかですが、私の場合は手軽なところからで、皆さんも関心があると思われるゴルフの上達です。いい手術をするためにも体力維持とマネージメントに役立つゴルフを継続し、自分の健康管理も怠らないようにしたいですね。

55歳を過ぎたころから、外科医としての最終コーナーをどう回るか考えるようになりました。何度も書いていますが、自分の中では、同じ手術で2回続けて患者を失ったら引退すると決めています。比較的簡単な手術だけやっていればかなり長く手術は続けられますが、それでは後進の医師たちの教育にはなりません。難敵に立ち向かってこそ意味があります。自分がエースでなくなったら私が手術室というマウンドに立つ意味はないのです。私の医局にいる医師たちだけではなく、多くの医師が、医療の公共性と社会貢献を優先し、無駄のない治療を心がけるようになれば、患者さんや遺族を苦しめるような医療過誤はかなり少なくなるのではないでしょうか。

天野 篤(あまの・あつし)
順天堂大学病院副院長・心臓血管外科教授
1955年埼玉県生まれ。83年日本大学医学部卒業。新東京病院心臓血管外科部長、昭和大学横浜市北部病院循環器センター長・教授などを経て、2002年より現職。冠動脈オフポンプ・バイパス手術の第一人者であり、12年2月、天皇陛下の心臓手術を執刀。著書に『最新よくわかる心臓病』(誠文堂新光社)、『一途一心、命をつなぐ』(飛鳥新社)、『熱く生きる 赤本 覚悟を持て編』『熱く生きる 青本 道を究めろ編』(セブン&アイ出版)など。
(構成=福島安紀 撮影=的野弘路)
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