インド・バンガロールの病院の現実
1月下旬、インドのシリコンバレーとも呼ばれるIT(情報技術)産業の集積地、バンガロールへ3泊5日で行き、2つの病院を視察してきました。バンガロールはインド南部の都市で、日本を含む海外の多くの企業もここに拠点を置いています。
私が視察したのは、貧困層を含む一般向けの「ナラヤナ・ヘルスケア」グループの心臓病専門病院と、主に富裕層向けで、セコムの子会社・セコム医療システムが昨年3月にオープンしたばかりの「サクラ・ワールド・ホスピタル」の2カ所です。
サクラ・ワールド・ホスピタルは、最新の医療機器や設備、ホスピタリティが整った病院で、それはそれで興味深かったのですが、ナラヤナ・ヘルスケアでは、私のモットーである「早い、安い、うまい」心臓手術と医療サービスが提供されており、医療費増大に苦しむ日本の医療の活路を見出だせた気がしました。
ナラヤナ・ヘルスケアは、心臓外科医のデビ・プラサド・シェティ医師が、2001年に創業した病院グループです。シェティ氏は、かつて、ノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサの主治医を務め、「お金のあるなしに関係なく、多くの患者を助けたい」と考えてこの病院を開業したそうです。
心臓専門病院はベッド数が400床で、年間約6000例の心臓外科手術と年間約3000例のカテーテル治療を実施しています。順天堂大学医学部附属順天堂医院の心臓血管外科では、年間730例の手術を実施していますが、それでも日本の中ではかなり多い方です。欧米では心臓病手術の集約化が進み、1000例を超える病院は決して珍しくありませんが、年間6000例というのは、かなり多いことが分かっていただけると思います。
驚いたのは、ナラヤナ・ヘルスケアでは、ある程度高い医療水準を維持しながら、心臓手術の平均施術料が約800ドル(約10万円)と非常に格安であることです。日本では、例えば冠動脈バイパス手術なら総医療費が約350万~400万円かかります。実際には、医療費の自己負担額を軽減する「高額療養費制度」などの利用で個人負担は2万~30万円くらいでしょうか。日本は国民皆保険なので個人負担は少ないですが、国家的には高額医療であることは変わりがありません。