世界標準の安全性が求められている
東京女子医科大学病院と群馬大学医学部附属病院の2つの大学病院が、6月1日付けで、特定機能病院の承認を取り消されました。
群馬大病院の問題については、以前この連載でも触れましたが、40代男性医師(3月末に退職)が実施した肝臓の腹腔鏡手術後に立て続けに患者が亡くなったのに、改善策が講じられませんでした。男性医師に批判が集中しましたが、むしろ、診療科、病院としての対応に大きな問題があったと思います。女子医大の問題は専門外なのでコメントを控えますが、小児患者への投与が禁じられている鎮静剤を人工呼吸中に投与された2歳の男の子が昨年亡くなり、薬の禁忌に関する情報が院内で周知されていなかったことが問題になりました。特定機能病院を取り消されたからといって、直接患者さんの診療に影響が出ることは少ないはずです。ただ、医療費の優遇が受けられないので、大学病院にとっては大幅な減収になり、医療スタッフなどが減らされる可能性があります。
特定機能病院は、400人以上の患者を入院させることができ、「高度の医療の提供」、「高度の医療技術の開発及び評価」、「高度の医療に関する研修」の3つの機能を持った病院です。大学病院を中心に全国84か所(2015年6月現在)の特定機能病院がありますが、厚生労働省は、2つの大学病院の不祥事を受けて、6月から全特定機能病院に立ち入り検査を行うそうです。順天堂大学医学部附属順天堂医院でも、厚生労働省による立ち入り検査が予定されています。もしかしたら、慌てている特定機能病院もあるかもしれません。しかし、当院は、国際的な病院機能評価機構JCI(Joint Commission International、本部:米国・シカゴ)の認証を受ける準備をしており、ほかの病院のお手本となるような医療事故防止や安全対策を入念に実施していると自負しています。
JCIは、世界基準で患者さんの安全性が確保されているか、高い質の医療が提供されているかを詳細な項目で厳格に評価する非営利の団体です。今年2月に、埼玉医科大学病院国際医療センター(埼玉県日高市)が、大学病院で初の認証を受けました。若手の医師が海外でトレーニングを受ける際にも、JCI認証を受けた病院で教育や研修を受けてきたことが条件になっています。
今のところ日本では、聖路加国際病院(東京都中央区)、亀田メディカルセンター(千葉県鴨川市)など13病院しか認証されていませんが、認証を受ける準備をしている病院は他にも複数あると聞いています。10~20年前に比べると、どの病院も、医療事故防止や医療安全にかなり時間と労力を割くようになってきていますが、恐らく、病院によって安全対策のやり方や力の入れ方には差があります。今後は、JCIの認証を受けているかどうかが、患者さんが病院を選ぶ目安の一つになっていくのではないでしょうか。