私たちは、市場というものを、時々誤解する。ヒットするものは、人々が望んでいるものだから、あまり突飛なものや、過激なものは受けないと思い込んでいる人も多い。
しかし、実際には、市場は、常にオリジナリティを望んでいるようだ。「パーシー・ジャクソン」のシリーズは、その1つの例であるように思う。
もちろん、オリジナリティがあるだけでは、足りない。その独創性が、人間の普遍的な感情、価値観に訴えかけたとき、大きなヒットにつながる。
「パーシー・ジャクソン」で言えば、主人公が難読症で、ADHD(注意欠陥多動性障害)であると設定されていることは、生きにくさを感じている多くの子どもたちの心の琴線に触れるだろう。
実際、作者のリック・ライアダンの息子さんが難読症、ADHDと診断されていた。その息子さんにギリシャ神話を聞かせていたことが、「パーシー・ジャクソン」シリーズ誕生のきっかけになった。
ほかのどこでも聞いたことがないオリジナリティと、人の心に響く普遍性。このような「ヒット」の法則は、例えば、「ポケモン」や、「妖怪ウォッチ」といった大ヒット作の設定が、当初はいかに独創的なものであったかを思い起こせば納得できるだろう。
「ポケモン」で言えば、バトルをするのが自分ではなく、育成したポケモンだという設定がオリジナルだった。また、「妖怪ウォッチ」では、子どもたちが直面する問題が、何らかの妖怪のせいだ、という設定が、独創的だった。
子どもは、大人よりも素直に作品に反応する。子どもの世界から生まれるベストセラーの中に独創的なものが多いのは、そのせいかもしれない。
ヒットの背後にオリジナリティあり。きちんと「宿題」をしないと、市場は反応してくれないのだ。