羨望や妬みには「余裕」という怒りを見せつける

いささか厄介なのは、羨望や妬みに対する怒りの表明。出世の早さを妬んで「上司におべんちゃらを使った」「賄賂を贈った」などと根も葉もない噂を広める人はどこにでもいます。こういう作り話をする人は自己愛が強く、自分が認められない悔しさが心の内にあり、噂を流すことで相手の足を引っ張り、あわよくば代わりに自分が出世したいという感情を持っています。

この場合は、スルーを決め込むのが何よりの戦略。余裕を見せつけることで怒りを伝えるのです。あるいは、なにかの折に「課長になって、あれこれ言われて参ってるんだよ。課長なんて給料はたいして増えないし、責任だけが重くなっていいことなんてないのになぁ」と話してみるのもいいでしょう。「噂を流していることはわかっている」ということを暗に伝えれば抑止効果が期待できるかもしれません。

避けたいのは直接対決。「噂話を流すのはやめろ!」とダイレクトに怒りを表明すれば、妬みの感情を助長して火に油を注ぐようなもの。誹謗中傷がエスカレートする可能性があるのです。

こうした怒りの表明方法は、言葉だけに限りません。ある銀行の支店では2人いた課長を1人に減らされて、残った課長の仕事量が増大。現場の状況を無視した人事への怒りから、お荷物社員を別の支店に引き取ってもらい、使える人員を確保したケースがありました。怒りを抑え込んで愚痴をこぼすだけでは、問題解決にならないということを忘れないでください。

さらにいえば、怒りをエネルギーに変換して成功を手に入れた例もあります。青色発光ダイオード(LED)の開発で、2014年にノーベル物理学賞を受賞した中村修二さんです。記者会見の席で研究の原動力について「アンガー(怒り)だ」と語っていたように、自分の研究が勤務先の会社で認められなかった怒りをエネルギーにして青色LEDという偉大な発明をしたのです。

怒りを抑え込むのは百害あって一利なし。ストレスの多い現代人こそ、上手な怒り方を学ぶべきでしょう。

片田珠美(かただ・たまみ)
1961年、広島県生まれ。大阪大学医学部卒業、京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。京都大学人間・環境学博士。パリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。著書に『他人を攻撃せずにはいられない人』『賢く「言い返す」技術』『怒れない人は損をする!』など多数。
(上島寿子=構成)
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