5年間「フィナンシャル・タイムズ」に勤務し、現在は「ニューヨーク・タイムズ」の記者として活躍するデイヴィッド・ゲレス氏。大学3年のときにインドに留学し、そこで瞑想を学んだが、それ以来20年あまりマインドフルネスを実践してきた。
ここ数年、このマインドフルネスという言葉が、シリコンバレーを中心にアメリカで注目されている。アップルやグーグルなどのトップ企業が率先して社員セミナーに導入し、社員の力を最大限引き出す方法として一気に広まった。ゲレス氏は改めてその本質を見極めるべく、1年以上全米を旅し、職場でマインドフルネスを探求しようとしている人々に取材を行い、『マインドフル・ワーク』(NHK出版)として昨年出版した。
マンハッタンにあるニューヨーク・タイムズのオフィスでゲレス氏に、マインドフルネスの実態を聞いた。
ビジネスの成功とEQアップを両方叶える
全米の主要企業、特にシリコンバレーで「マインドフル革命」が席巻しています。一昔前なら「ヒッピー的」とか「スピリチュアル」なものとして一笑に付されたようなことが、今主流の「心のエクササイズ」として実践されているのです。
そもそもマインドフルネスという考え方がビジネスに取り入れられたのは、ここ10年のこと。1970年代のアメリカのビジネスリーダーの中には瞑想とマインドフルネスを試みている人がいましたが、決して主流になることはありませんでした。ビジネスにおいて、人々が真剣に熱意を持って実践し始めたのは最近なのです。
マインドフルネスセンターを創設し、所長を務めるのは、マサチューセッツ大学医学部のジョン・カバット=ジン教授。彼やウィスコンシン大学で心理学と精神医学の教授をしているリチャード・デイビッドソン、心の知能指数と言われるEQ(Emotional Intelligence Quotient)を提唱したダニエル・ゴールマンは、何年も前からマインドフルネスを実践しており、彼らはMBSRなるものをつくりました。マインドフルネス・ストレス低減法(Mindfulness Based Stress Reduction)の略です。これが今、本格化しているマインドフル革命の道を開いたのです。