「マインドフル肉」が出るほどの大ブームに

私は折に触れて15年前から瞑想を実践してきました。ですから、企業がマインドフルネスを実践していると初めて聞いたとき、疑いの目で見たことは確かです。「利益を最優先させる企業に何がわかるのか」と思いました。でも私は実態を自分の目で確かめるべく全米を取材し、企業が実践しているマインドフルネスが単なる一時的なブームではなく、本格的で真剣なものであると納得しました。つまり、マインドフルネスを実践するのに場所は関係ないのです。禅道場である必要はありません。

さらに、ゴールドマン・サックスのような世界最大級の投資銀行がマインドフルネスを実践している事実も広まり、マインドフルネス革命に拍車をかけることになりました。

ゴールドマン・サックスがマインドフルネスを実践することに対しては、当然批判もありました。マインドフルネスを商品のようにマーケティングに利用しようとすることを「マクマインドフルネス」と呼びますが、マインドフルネスと利益を同時に追求するビジネスは、そもそも矛盾すると思われてきました。ビジネス界には、共感と瞑想を資本主義と結びつける余地はないと考える人も多かったのです。さらに「変装した宗教」であるとか「仏教に改宗させるための秘密の方法」であるという噂までたちました。

しかし、ビジネスで実践されているのを見ると、彼らが求めているのはストレスの軽減、集中力の強化、免疫力の強化、心の優しさが増すことなどで、それ自体は間違っていません。ですから、ビジネスとマインドフルネスを結びつけるのは不適切であるという批判は過剰反応だと思います。もちろん「マインドフル・ミート」という精肉店が出現したり、商品名に「マインドフル」をつけたら売れるという発想にはいささか抵抗がありますが、全体的に見るとこういうマインドフルネスの要素はコーポレートガバナンスやお金儲けと対極にあるわけではありません。