2つ目は、有形無形の支援というギブを与え続けていれば、いつかテークを返してくれるだろうと考えているのです。もう少し具体的にいえば、たとえばあるベンチャーがスマホのアプリを開発したとして、われわれがそのアプリに当社のユーザーを誘導したとしたら、その際に料金をいただけるかもしれない。

最後は、「KDDIはベンチャー支援に積極的なんだ」というイメージを内外に持ってもらえることです。そういうイメージが定着すると、事業を思いついた人に「とりあえずKDDIに持っていこう」と思ってもらえます。これが予想以上にうまくいっていて、国内外問わずおもしろい案件が持ち込まれています。

ここで大事になるのはその「目利き」。そこはパートナーであるグローバル・ブレインに、ビジネスモデル、経営陣の組成、投資の出口戦略が描けるかなどを分析してもらっています。

当社ではこの2つの取り組みが、外の業界の人たちと出会う「場」となって、世界を広げてくれました。私自身も、スマホ1台の先にこれほどの世界が広がっていることに驚かされています。

当社の仕事の種の見つけ方を紹介してきましたが、個人でも同じことが言えるのではないでしょうか。自社や業界の枠を超え、異業種の人と交わったり意見を交換したりすることで、自分では気がつかなかったアイデアを得られることがあります。

このときも、先に利益を求めてはいけません。おもしろいと思うビジネスの種を見つけたら、自分ができる範囲での支援をしてみる。当社での取り組みと同じように、先に述べたような3つのリターンを得ることもできると思います。

KDDI 執行役員専務 バリュー事業本部長 兼 グローバル事業本部担当 高橋誠
1961年、滋賀県生まれ。横浜国立大学工学部卒業後、京セラ入社。同年、第二電電企画(現KDDI)に転籍。2003年、コンテンツ本部長、07年、常務。11年、執行役員専務(現職)。15年、バリュー事業本部長 兼 グローバル事業本部担当(現職)。
 
(衣谷 康=構成 尾関裕士=撮影)
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