イノベーションは1人で起こせない
1人で朝から悩み、時間ばかりが過ぎてしまう。そんな経験はないだろうか。そんなとき、人と話したり知恵を借りると、意外にあっさりとうまくいくことがある。
「他人から知恵を借りる」という仕組みを企業レベルでつくり、新規事業立ち上げのスピードを上げようとしているのがKDDIの∞Labo(ムゲンラボ)だ。同社の取り組み例から、他者との協働によって効率的に仕事を回す方法を考えてみよう。
∞Laboは、世界に通用するインターネットサービスを生み出そうとする起業家やエンジニアを支援するプログラムだ。彼らに対し、サービス開発の支援や事業経営のアドバイスを行う。
2011年にスタートして現在8期までが終了。応募は毎期100~200件あり、そのうちの4~5件を選定し、約3カ月間、事業開始のサポートを行う。
KDDIは現在、通信事業が絶好調。なぜ一見、本業とは無縁の∞Laboを立ち上げたのか。バリュー事業本部新規ビジネス推進本部戦略推進部長で、∞Labo長を務める江幡智広氏は言う。
「今の時代、イノベーションを起こさなければ生き残れません。しかし、自分たちで起こすのには限界がある。その一方で面白いアイデアを持った若い人が続々登場しています。彼らにはヒト、モノ、カネが足りません。お互いのいいところを補完し、新しいイノベーションを起こしたいと思ったことが、設立のきっかけです」
∞Laboの拠点は、DeNAやLINEが入居する渋谷ヒカリエにある。KDDIの本社は飯田橋にあるが、「ベンチャー企業が多く集まる渋谷のほうがイノベーティブなアイデアが生まれやすい」(江幡氏)という理由からだ。
KDDIがサポート期間中に行うのは原則、人的支援のみ。すぐに資金を提供することはしない。アイデアを持った起業家をサポートするため、KDDIは約3カ月にわたり、専任の社員を送り込む。