商社・卸売業の人事制度は営業マン中心

グラフは、企業規模ごとの年齢別・年間賃金(時間外手当含む)の比較です。

グラフを拡大
卸売業 企業規模別 年間賃金比較(時間外手当含む)

この業種の特徴は、企業規模によらず、全般的に給与水準が高いことです。特に、社員数1000人以上の大手商社になると、全業種の中でも、常にトップクラスの給与水準となっています。

これは、営業マンなどホワイトカラー職種が多数を占めるため、人材獲得の競争力を維持するためという理由があります。しかし、何よりも高い賃金を可能にするには、それに見合った社員ごとの稼ぎ(=生産性)が必要です。商社・卸売業は、社員の生産性を示す「1人当たり付加価値高(≒粗利益高)」といった指標が比較的高水準なため、高めの賃金を支払う能力があるということになります。

商社・卸売業の人事制度では、中心職種である営業マンのやる気を引き出すことが重要です。ハイパフォーマンスを発揮する営業職に対していかに脚光を当てるか、ということが組織運営のコツでした。若手でも管理職として抜擢したり、あるいは専門職として営業を極めたりできるような組織運営が、これまで有効でした。

ただし低成長が続く経済環境下では、突出した個人の営業力に頼るだけでは、業績確保が難しい業界も増えてきました。組織力に重点を置いた営業方針の会社であれば、個人業績よりも、チーム成果やチームへの貢献度に、評価の軸足を移すことを検討すべきです。

一方で、先述したように、多様な機能を強化している企業については、営業マンを中心としながらも、強化分野の専門職人材の評価・処遇が悩みどころです。売上高や粗利益高など、比較的仕事の成果が明確に見えやすい営業職とは異なり、商品開発やメンテナンスといった職種は、成果が短期的に出なかったり、明確になりにくいケースも多いからです。

会社がどのような商社像を目指しているかによって、人事制度も変えていかざるを得ないといえるでしょう。

【関連記事】
伊藤忠商事、“朝型勤務”転換で、仕事効率25%アップ
商社、テレビ局の年収ランキング“二強”時代は続くのか
「年収ランキング」給料が高い会社ベスト500
絶好調の総合商社を牽引する異色経営者
リクルート出身者は本当に優秀なのか