独立しやすい制度が「目立つOB」を生んだ
私は、「元リク」だ。大学を卒業後、97年にリクルートへ入社し、05年に退職した。「元リク」とカミングアウトするときは、少しだけ緊張する。世代やスタンスなど、相手によって反応がまるで違うからだ。
世間には「リクルート信者」と呼ぶべき人たちがいる。社会人から学生まで、いまの自分の立場に不満を持っている人が多いようだ。彼らは目をキラキラとさせて「リクルート出身なのですね。すごい! その頃の話を聞かせてください!」などと言ってくる。ただ、こういう人たちは、驚くほど実態を知らない。
いまやリクルートは「普通の日本の大企業」である。グループ従業員数は約2万8000人。昨年度の連結売上高は1兆1915億円。このうち海外部門は2800億円と23%を占め、グローバル化が進む。20年前には約1兆4000億円の有利子負債があったが、完済している。「人材輩出企業」という評価も聞く。「元リクは優秀な人ばかり」というのだが、これは本当だろうか。OBの一人としてあえて言おう、カスである、と。いや、それは幻想である、と。
たしかに、著名人は多い。最近の「元リク」界では、東の横綱がJリーグチェアマンの村井満氏、西の横綱が西宮市長の今村岳司氏だろう。
村井氏は人事担当の執行役員やリクルートエージェント(現リクルートキャリア)の社長などを歴任した人物である。Jリーグでは元日本代表選手だった川淵三郎氏が初代チェアマンを務めて以後、Jクラブ経営者が就任しており、外部からの登用は村井氏が初めてだ。駆け出しのころに「◯◯屋」という個人商店に電話をかけまくっていたら、高島屋社長のアポがとれてしまったという話をはじめ、人間味のあるエピソードには事欠かない。
「西の横綱」の今村氏は、私と同じ1997年入社だ。99年、26歳の時に西宮市議選に初出馬し、トップ当選。以来15年、市議を務め、この4月の西宮市長選に出馬し、現職を破って初当選を果たした。
「元リク」がメディアに登場するようになったのは2000年代前半からだ。代表格は、くらたまなぶ氏、藤原和博氏、松永真理氏、小笹芳央氏など。日本経済に閉塞感が漂う中、リクルートという企業と社員、OB・OGに注目が集まったのだった。
こうした経緯から「リクルートは優秀な人材をたくさん輩出している」などといわれる。たしかにその論拠には正しそうなものもある。