若手中心の業界だけに、将来の高齢化が課題

IT企業の人事・給料の特徴について考えてみましょう。

ここ数年、国内経済の持ち直しに加え、マイナンバー特需なども手伝い、IT市場は好調を継続しています。まだまだ発展の余地がある業界であるため、市場としては今後のさらなる拡大が期待されるところです。

ただし、IT業界固有の組織課題には、大きく以下の3つがあります。

1つ目の課題は、「社員の高齢化への対応」です。IT企業の場合には、特に大きな問題となる可能性があります。他の業種では、30代後半から40代後半にかけて人員構成が膨らんでいるのに対し、IT企業が属する情報通信業の場合、20代後半から30代後半の部分に人員構成の“大きな山”があります。社員の年齢構成が若いということは、今現在としては、非常に好ましい状態です。しかし裏を返せば、10年後、20年後を見通すと、これから急速に社員の高齢化が進んでいくという事実を示しています。したがって、IT企業においては、今後、社員の高齢化にどのように対応していくかということを、できるだけ早い時期から具体的に検討しておくことが必要になります。

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IT(情報通信)業 企業規模別 年間賃金比較(時間外手当含む)

2つ目は、「技術進歩への継続的な取り組みの必要性」です。IT業界は、数年単位で技術レベルが高度化していく、極めて特殊な業界です。さらに、技術の高度化は、新しい情報サービスの創出にもつながり、市場動向までも変化させていきます。このような変化の激しい環境の中で、自社が取り残されないためには、社員の早期育成が非常に重要になります。限られた育成時間や育成費用を、市場変化を見据えて素早く・効果的に投資することが、会社の将来の命運を握っているといえます。

最後は「長時間労働の削減に向けた取り組み」です。IT企業では、長時間労働による過労で、心身の不調を感じる社員が少なくありません。その結果、社員が休職したり、さらには退職にまで至ると、会社としては大きな損失を被ることになります。一人前の技術者として活躍できる段階になって退職されてしまうと、教育に費やしてきた時間とコストが無駄になってしまいます。また、長時間労働による残業代の増加は、人件費に大きな影響を及ぼします。業界の特性上、簡単に解決できるテーマではないものの、残業削減に向けて継続的な取り組みを行うことは、IT企業にとって必要不可欠なことといえます。