新年の抱負は行動してこそ変化が起こる

また、挑戦してうまくいかなくても、あまり反省しないほうがいいという。何がダメだったかということばかりに心が捕らわれてしまうと、ネガティブな感情が刷り込まれ、経験することに臆病になってしまうからだ。それよりも、次はどこをどうすればうまくいくかという問いかけを自分にするようにする。レジリエンスを高めるにはそのほうが有効だという。

起こっている事象の見方を変えることも大切だ。たとえば、水筒に水が半分入っている状態を表現するときには「半分しかない」とも言えるし、「まだ半分もある」と言い換えることもできる。一見ネガティブな事象でも、見ているフレームを変えるとポジティブに見えるようになる。これはリフレーミングという手法で、意識して習慣にすると、レジリエンス強化にもつながる。ただし、あくまで前提となる経験がないと効果はないそうだ。

「よく自分を変えようと自己啓発本ばかり読んでいる人がいますが、ほとんど意味がありません。たしかに読んでいると溜飲が下がり、自分が変わった気になりますが、人間は頭で理解しただけでは変わりません。毎年正月に年頭の抱負を立てるのに、立春のころにはすっかり忘れてしまっているのも同じことです。思ったり願ったりしているだけではダメなのです。行動することで自分にも周囲にもいろいろな変化が生まれます。その変化を自分で確認し受け止めることで、単なる頭での理解から腹落ちに昇華する。その1つひとつの積み重ねでしか人間は変われないのです」

体験を貯めていく過程では、自分の考えを誰かに語るというのも重要な要素のひとつだ。実はたいていの人は、自分が何に対してストレスを感じているのかを把握できていない。「カウンセリングをしているとわかりますが、話をしているうちに頭の中が整理されていきます。そうすると自分は何に悩んでいたのか認識をはっきりと持つことができるのです。その状態になることができれば、こちらが何も言わなくても、その人は勝手に自分で問題を解決していくことができるのです。話をする相手はカウンセラーでなくても、同僚でも友人でもいい。ただ専門のカウンセラーのほうが、出かけていって、お金を払うという行動が伴う分、レジリエンスの強化にもつながるかもしれませんね」。

埼玉学園大学人間学部長 小玉正博
1949年生まれ。筑波大学名誉教授。専門は臨床心理学、認知行動カウンセリング。著書に『ヘコんでも折れないレジリエンス思考』。
(埼玉学園大学人間学部長 小玉正博=解説 共同通信社/amanaimages=写真)
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