毎月の家賃、仕入れ代金など、損益分岐点は60万円。現在、毎月の売り上げは約80万円で、「自分の給料が出るか出ないか」(Cさん)程度だという。

「今年6月から、銀行への返済が始まる。飲食業は波があるから、時には自分の給料が出ないときさえある。しかし、支払いを滞りなく済ませるために、場合によっては消費者金融に手を出すことだって覚悟していた」

これら個別の事例が特別ではなくなる可能性は高い。前述のとおり、「年収の3分の1」にはクレジットカードのキャッシングも対象で、返済の遅延が借り入れを難しくすることになりそうだからだ。

こういった借り手側の問題を重視した金融庁はプロジェクトチーム(PT)を昨年11月に設置、改正に伴う激変緩和措置策を今年4月明らかにした。

それによると、(1) 借入残高を段階的に減らしていくための借り換えの推進、(2)個人事業者が提出する事業計画等の記載事項の簡素化、(3) 多重債務者等の生活再建・事業再生のための多様なセーフティネットの充実・強化など10項目。借り換えの推進は、簡単にいえば借金の一本化。低利にまとめ上げ、支払い困難に陥ることを防ぐ方策である。事業計画の簡素化は、Cさんのような個人事業主が資金繰りに困った際、「事業目的で使用するため」と一筆書けば大丈夫というもの。銀行に提出する詳しい事業計画と勘違いしている人も多いが、要は個人と事業主との差別化を図れば融資可能にするというものだ。