せめて金利引き下げと総量規制は時期をずらすべきだったと語る。個人に対する貸し渋りが多発し、禁酒法で密造酒が出回ったように、またも闇金融が跋扈すると警鐘を鳴らす。また、借り手側に規制をかけるよりも、業者側に対して広告規制を行い、市民の目から遠ざけることをやるべきだと、笠虎氏は提言する。
被害者救済の立場からも異論を唱える声があがっている。女性の多重債務問題に取り組んできたNPO法人「女性自立の会」の有田宏美理事長は、総量規制は借金がない人には効果的な手段だが、すでに借金まみれの人たちには逆効果の恐れがあると訴える。
「無収入の主婦は、夫に借金の事実を“言うべき”だというのは正論です。しかし、より借金が膨らむことよりも、夫や他人に知られることが怖いと感じている女性が多い。正論を振りかざすだけでは多重債務者の女性たちは救われません。現実は“言えない”のです」有田理事長は、相談に来る女性たちに対し、時間をかけて心のひだを解きほぐし、現実に向き合う努力を作業を繰り返してきた。夫に事実を伝えるためには、それだけに「総量規制」という名の“閉め出し策”に憤りと不安を感じているという。そして、今もっとも必要な方策は子どもたちに対する教育だと語る。
「いきなり総量規制を実施する前に、将来多重債務に陥らないように、お金に関する教育に力を注ぐべきではないでしょうか」
「無収入」というだけで、家計を預かる専業主婦がいきなり“借金弱者”に陥る構図があるという。
(宇佐見利明=撮影)