社員の企画書を見るときは、企画の筋のよさと思いの強さを重視します。「市場規模はこれだけで、わが社はこのうち1%を取れる」などと書き連ねた分厚い資料より、個条書きでも「須田さん、すごい企画思いついちゃったんですよ!」という熱が感じられるもの。熱がないと新しいことは生み出せませんし、理路整然と考えをまとめているうちに熱は冷め、チャンスも逃してしまいます。
もし上司がウェブに対して知識も理解もないなら、とにかく先にプロトタイプ(試作品)をつくってしまうことです。われわれも、アイデア段階ではベンチャーキャピタル1社しか興味を持ってくれなかったのに、形のあるサービスとして世に出したとたん、25社から連絡がありました。やはり、目に見えるモノがあると人はイメージしやすいのです。上司も「そこまでやったのなら」という気分になるでしょう。
上司のリスクを減らしてあげることも重要です。「いまの業務は100%やります。そのうえでこの企画をやらせてください」といえば「ならいいよ」といわざるをえません。
当社では、「世界中の蚤の市の商品が買えるようなバザール・サイトをつくりたい」という入社3年目の女性デザイナーからの提案で、「バイマバザール」という新しいサイトをオープンしました。彼女は気合の入ったサイトのビジュアルイメージを用意し、「この人たちとやりたい」というチームも決め、「本業をやりながらそれ以外の時間で取り組む」と提案してきたので、ノーという理由がありませんでした。
ウェブサービスの場合、重要なのは立ち上げよりも運用です。アイデアを出すだけでなく、チームまで集めてあれば、思いつきではないことも伝わります。
考えすぎはよくないといいましたが、やりたいモノやサービス自体については誰よりも考えていなければいけません。「とにかく自分がこのサービスを使いたい。だから私に任せてください」といえるのが一番強い。「このサービスのターゲットは自分です」といえる状態で企画を持っていくのが最強だと思います。
1974年、茨城県生まれ。慶應義塾大学大学院修了後、博報堂入社。2002年、会社勤めを続けつつ同僚の田中禎人氏(13年退任)とともに起業計画を練り始める。04年、エニグモ設立。12年、マザーズ上場。