胸にグサリと突き刺さる厳しい言葉に、場内に緊張が走った。営業系の課長もたまらずこう言い放った。

「それは違うだろう。売れる薬を作るのが生産・開発の仕事だろう。俺たちだって一生懸命にやっているんだ!」

「よし、そこまで言うなら、今この場で、何年以内にこうしますと一人ひとりの決意を語ってくれよ」

互いの中傷から始まった議論は、しだいに自分たちが何をやるべきなのかを真剣に考えるものに変わっていった。人事担当者は「毎日、毎晩繰り返すことで、最終日には決意を新たにする社員も増えた」と言う。

社員の子会社への移籍などの構造改革と意識改革活動を終了するまでに1年半を費やした。従業員に痛みを強いる大改革であったが、それだけで終わらなかった。終了後まもなくして同業他社との合併合意が発表されたのである。社員からは怨嗟の声が飛んだ。人事担当者は振り返る。

「経営トップは我々よりも先を見て動いていたということです。経営改革と合併で一回り大きくなれば強くなれるという判断であり、経営者としては正しい選択だった。しかし、担当者としてはやりきれない思いも残りました」

合併後、数次にわたるリストラが実施されている。また、本社から移籍した社員の子会社はその後、同業他社に売却された。そのなかの1社は外資系に売却されたが、日本からの事業撤退で社員は散り散りになったという。

(相澤 正=撮影(内永氏)、東洋経済・ロイター/AFLO=写真)
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