アイデアの重大な欠陥を照らし出す

アイデアを初期段階で検証できるデータを生み出す方法を考えるには創造性が必要だ。一例をあげると、わがイノサイト社は、消費者に彼らの気分や居場所によってカスタマイズされたコンテンツを届ける新サービスを検討していた携帯機器会社に、アドバイスを提供したことがある。問題は「そのサービスをカネを払って利用したいと思う消費者がいるか?」だった。

そこでわれわれはまず、クラウドソーシング・サービスのイーランスで第三者のデザイナーを見つけ、彼らと協力してインターフェースの外観模型を構築するとともに、そのサービスの仕組みを説明する2分間のアニメーション・ビデオを制作した。

その後、顧客に模型とビデオを見せ、最後に顧客にこのアイデアのベータテストに最初に参加するユーザーになりませんかと呼びかけた。参加者は自分のクレジットカードの番号をわれわれに教える必要があり、テストが始まった時点で5ドル課金されることになると、われわれは彼らに説明した。実際には彼らから料金をとるつもりはなく、重要な個人情報を明かすほどこのサービスに関心を持つ顧客がどれくらいいるかを知りたかったのだ。かなりの数の顧客が喜んでカード番号を教えたとき、われわれは自分たちが正しい方向に進んでいることを確信した。

この種の実験のきわめて重要な効用の1つは、多額の投資という誤りを犯す前に、アイデアの重大な欠陥を照らし出してくれることだ。1つの具体的な実験の結果は、膨大な量の過去の市場データに勝るとも劣らない価値があるのである。

ある教育会社が新しい教員採用方法のアイデアを持っていた。学校側も教員志願者の側も、教える能力や対人スキルを見るには履歴書はあまりよい方法ではないと、長年不満を訴えていた。では、教員志願者が作成した自分の仕事ぶりを見せる短いビデオクリップを学校が閲覧できるようにするサービスを提供してはどうだろうとその会社は考えた。教員志願者たちも学校もそのコンセプトを理屈のうえでは歓迎した。

同社は、実際の志願者たちに実際にビデオをつくってもらうために、少数の教員養成大学とオンライン・フォーラムでそのサービスを宣伝した。が、誰も関心を示さない。そこで、同社はビデオをつくって登録してくれた人には100ドル支払うというオファーまでした。それでも、誰も関心を示さなかった。

彼らはビデオを通じて自分を売り込むというコンセプトは気に入ったが、実際には、自分がどのような印象を与えるか不安だったのだ。