一番のネックになる問題は何か

まず売り込む相手が最も懸念すると思われる問題を解決しよう。それは、顧客は提案されている製品またはサービスを本当に使う気になるかという問題かもしれないし、そのアイデアは技術的に実現可能か、という問題かもしれない。もしかしたら、彼らはオペレーションの細部が成功を妨げるのではないかと危惧するかもしれない。

取引をつぶす危険性が最も高い問題を特定したら、それを検証する手軽で低コストの方法を見つけよう。ここで最も重要なのは、検証しようとしている条件をシミュレートすることだ。

一例をあげると、タイム・ワーナーの一部門、ターナー・ブロードキャスティング・システムは、コマーシャルの時間の冒頭に流す広告をテレビ番組や映画の直前のシーンと結びつけるというアイデアを数年間、検討していた。子どもが泥水の中に落ちるシーンの後に洗濯用洗剤のコマーシャルが流れるのを想像してみるといい。学術的な調査で、この文脈上のつながりはきわめて大きなインパクトを持つことが明らかになり、ターナーが適切な広告主を適切なコマーシャル枠と組み合わせることで大幅な割増料金を請求できる可能性が高まった。だが、コンテンツを広告に結びつけるのに使うシステムが高額すぎて、そのサービスから利益を得るのは難しいのではないか、という危惧があった。また、ターナーの映画やテレビ番組のライブラリーに、広告主にとって効果的な文脈になりうるシーンが十分なかったらどうなるか、という問題もあった。

そこで、ターナーはサマー・インターンのチームを数週間1つの部屋に押し込んで、彼らに映画やテレビ番組を見させ、指定したいくつかのカテゴリーの文脈ポイントの数を数えさせた。それから、その結果を少数の広告主のところに持っていった。結果、広告主たちはそのアイデアを熱烈に支持した。

このデータがなかったら、チームは未知の要素でいっぱいの概念的なプランをプレゼンテーションしていただろう。だが、実験結果によって、アイデアは実現可能であり、潜在的広告主が関心を持っているという証拠を提示することができた。ターナーは2008年にこのアイデアを「TVイン・コンテクスト」という名前で売り出して、業界から大きな称賛を浴びた。