全人口の半数近くが「スマホ」を活用中
訪日中国人は特定の商品だけを大量に購入していく。中国人の消費行動に詳しい中国市場戦略研究所の徐向東代表は「中国人には非常に強固なクチコミのネットワークがある」と解説する。
一般的に、中間層以上の中国人は国営メディアの情報を鵜呑みにしない傾向があるが、そんな彼らが最も信頼を寄せているのは「家族や友人などの『身内』からの情報」だという。
「以前からそうした傾向がありましたが、スマートフォンの爆発的な普及で、コミュニケーションが活発化している」
人口13億7000万人の中国では、現在、約7億5000万台のスマートフォンが普及している。そこで利用されているのが中国版LINEとも呼ばれている「微信(ウェイシン)」だ。15年3月末時点で月間利用者は5億人を突破。筆者の中国の友人でも世代を問わず全員が微信をやっている。
「微信には『朋友圏(ポンヨウチュエン)』という友人同士のサークルがあります。家族や親戚、会社の同僚、学校の同級生から地元の幼なじみまで。複数のサークルに入っているのが普通です。そこで『日本で買うべき神薬』といったリストが出回っている。噂が噂を呼んで、『爆買い』といううねりを生んでいるのでしょう」(徐氏)
日本での売れ筋なら「中国製」でも大歓迎
もうひとつ不思議なのは、彼らが購入する商品の中には「メイド・イン・チャイナ」も多数含まれていることだ。筆者は以前、この疑問を中国人の友人にぶつけたことがある。その理由は主に2つにわけられる。
ひとつは、自国の市場に対する根強い不信感だ。「中国製品は信頼できない」「中国の食品を食べ続けていて大丈夫か」。中国人の多くは、そういった不安を抱えている。その半面として、「日本市場に出回っている製品は安心・安全だ」という日本信仰がある。
三菱総研の佐野紳也主席研究部長は、「中国人は同じ『中国製』でも、中国市場と日本市場では商品の品質が異なると考えている」と話す。
「『日本で販売されている』という点が重要なのです。『メイド・イン・チャイナ』であっても、日本市場で流通しているものは、日本企業の厳しい品質管理を経ていると考えられています」