なぜ本社が千代田区大手町・丸の内・有楽町にあるか?

ところで、日本の大手生保には、「監督官庁」以外の理由もあります。

前出の第一生命、明治安田生命、日本生命などの本社がある大手町・丸の内・有楽町は、国際的なビジネスセンターと言っていいでしょう。

保険だけではなく、金融・商社・メーカーなど世界のリーディングカンパニーが密集しています。その集積度は世界一ではないでしょうか。

このエリアに高層ビルなどの建物が100棟以上あり、就業人口は約23万人。 上場企業本社数は92社で、その上場企業の売上高は約135兆1180億円と言われています。日本の総売上高の約1割を占めるそうです(以上、一般社団法人大手町・丸の内・有楽町地区 まちづくり協議会資料より)。

東京・大手町の通り

フォーチュンTOP500には、「大手町・丸の内・有楽町」エリアの19社がエントリーしています(東京その他エリア26社、ニューヨーク18社)

要するに、大手企業の本社があるエリアには、自社の系列やグループ企業を含む一般の大手企業の本社も徒歩圏内にたくさんあり、効率よくセールスなどができます。BtoBのビジネスでは、そうした顧客のもとへすぐに駆けつけることができるから、超一等地を選ぶのです。

日本、とりわけ都内の集積効果は、恐るべきものがあります。

ニューヨーク・シカゴ・ロサンゼルスの3都市間の直線距離は5087kmで、人口の合計は4500万人。北京・上海・広州の直線距離は2283kmで、人口6100万人。それに対して、東京・名古屋・大阪の直線距離はたった386kmにもかかわらず、人口6500万人なのです(出典:The Time Now)。

日本は、大人口を擁する巨大都市が極めて近い位置関係にあります。地政学的に有利な環境であることが、日本経済の発展を昔も今も支えています。

その超集積の街のシンボルが、大手企業の本社がある大手町・丸の内・有楽町エリア。集積の効率を上げるにはこの上ない立地であることも、超一等地にわが国の大手企業が本社を置く理由なのでしょう。

ライフネット生命保険 会長兼CEO
出口治明

1948年、三重県生まれ。72年京都大学法学部卒業、日本生命入社。92年ロンドン事務所長、95年国際業務部長、98年公務部長。2006年生命保険準備会社ネットライフ企画株式会社を設立、同社社長に就任。08年生命保険業免許を取得、ライフネット生命保険社長に。2013年6月より現職。
(プレジデントオンライン編集部=構成)
【関連記事】
首都圏のIT産業従事者は都心5区に集中している
東京の清掃員は沖縄の営業マンより年収が高い?
「ユニーク発想がわき出る」世界のグーグルオフィス探訪
シリコンバレーは日本が目指すべき未来か
住民税が高い地域ほど国・私立中学進学率が高い?