常備しておきたい危機管理のお手本

小説やマンガを原作としたドラマ作品が多い昨今だが、本作は橋本裕志氏によるオリジナル脚本だ。橋本氏は、ドラマ「ショムニ」(フジ)、「官僚たちの夏」「華麗なる一族」「運命の人」(ともにTBS)などの脚本を手がけたヒットメーカーだ。ラインナップを見ると、社会性の強いドラマが並んでいることが分かる。

それが小学館文庫によってノベライズ(小説化)されたわけだ。著者は百瀬しのぶさんというフリーライター。1967年、東京都生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。この人の本は初めて読んだが、『おくりびと』(小学館文庫)、『ATARU』(角川文庫)、『リーガルハイ』(扶桑社)など、ドラマや映画の脚本を元にノベライズした作品が並ぶ。

脚本のノベライズは、台詞を崩さずに背景や描写を分かりやすく(読みやすく)書かれたもので、正直、読書家には少々物足りないだろう。その台詞の心理描写や違った言い回しで描くことはされないからだ。しかし、映像作品がメインなのだから、仕方ないところだろう。

つまり読書家よりも活字が苦手な人、ドラマを観ようかどうか悩んでいる人への参考資料といった意味合いが強く、入り口としてオススメとなる。何より、映像作品に忠実なので、ドラマを観た人には映像を思い出しながら振り返ることができ、これから映像を観る人にはそれぞれの役者がその台詞をどう発するのか、イメージを膨らませることができるというものなのだ。

しかも、本書は企業のリスクマネジメントをテーマとしていることから、身近に感じて読みやすいだろう。さまざまなリスクの対処法は無論ドラマのようにはいかないものの、おざなりだった危機管理からの脱出の手がかりになるはずだ。各部署に1冊常備しておくのも悪くないかもしれない。

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