英語辞典に掲載されている「karoshi」
オックスフォード英語辞典に「karoshi」という言葉が初めて採用されたのは10年以上前のこと。「過労死」のローマ字表記単語が掲載されている事実は、海外の人々の目に日本の労働市場が異様に映っていることを物語っているともいえるだろう。
本書のタイトルにある「ブラック企業」なる言葉はネット上で誕生した俗語で、不幸なことながら確実に市民権を獲得。2013年には新語・流行語大賞のトップ10にランクインした。労働問題に取り組む弁護士である著者は、この新語を「異常な長時間労働やパワーハラスメントなど、劣悪な労働条件で従業員を酷使し、離職率が高く、過労にともなう問題も起きやすい企業」と定義づける。
本書は実際に発生したトラブルや著者が相談を受けた事例を元に、49のモデルケースについて対処法を示していく。ブラックな病院を舞台とした漫画「ブラックジャックによろしく」の画を使うことで臨場感を加えている。
厚生労働省が公表した2014年度の労災補償状況ではうつ病など「心の病」で労災請求した人が統計開始以来最高の数値を更新。労災認定者も過去最高を記録したが、このうち厚労省が過労死のリスクが高まると位置付ける「過労死ライン」の残業時間(月80時間以上)を超えた人がおよそ4割を占める。
労働基準法第2条は「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである」とするが、現実の世界では、違法残業やパワハラから自殺という道を選択するケースも頻発しており、責任感が強い人、性格の穏やかな人ほど自身を追い込んでしまう傾向がある。また、正社員のみならずブラックバイトも社会問題になっている。
こうした時代に自分の身を守るためには、著者が提案するように、労働法の知識武装をしておくことも有用なのかもしれない。