日本でディーゼル車は支持されるか
このボルボV60でのドライブであらためて感じられたことは、新世代ディーゼルは道路交通の平均速度が低い日本においても、十分に良い選択肢になり得るということだった。ただ、誰にでも手放しで勧められるというわけではない。V60の場合、昨今のディーゼルモデルの中でも騒音・振動はきわめて良好に抑制されているほうだったが、とくにアイドリング時の振動はガソリン並みとまではいかない。本来、そこはアイドリングストップでカバーできるはずなのだが、ボルボは日本の真夏のような高温下ではアイドリングストップしなくなることが多いので、それを嫌がるカスタマーにとっては少なからずネガティブなものに感じられるだろう。
エンジンはもともと音がするもんなんだよと鷹揚に構えているカスタマーにとっては、新世代ディーゼルは十分以上に静かで、かつ面白く感じられることだろう。まずは速力。180~190psクラスの2リットルディーゼルは絶対性能も十分に優れているが、そればかりではない。ディーゼルはエンジンの熱効率の高い範囲がガソリンに比べて広く、加速後すぐにブレーキを踏んで運動エネルギーを捨てるような運転さえしなければ、少々走りを楽しんだくらいでは燃費を大きく落とさずにすむ。スロットルを踏み込むことへの心理的抵抗が小さく、ストレスフリーのドライブを楽しめるのだ。
その燃費だが、前出の18.9km/リットルという数値は、Dセグメントモデルとして最高レベルにある。同じような走り方をしたと仮定すると、おそらくトヨタ『カムリ』、『SAI』より上であろう。燃費で後れを取るのはホンダ『アコードハイブリッド』くらいのものだ。この燃費の良さに加え、単価の安い軽油を燃料に使うこともあって、走行コストの安さは圧倒的だ。鹿児島から東京まで1438.8kmを無給油走破を達成した後、都内で満タンにしたときは、そのスタンドの軽油価格がかなり安かったこともあって、要した燃料代はたったの6775円であった。最大のライバルであるBMW3シリーズも実燃費はV60と同等かそれ以上のレベルにあり、新世代ディーゼルに共通の特性と言える。
これからも複数のメーカーが投入してくるであろうディーゼルモデル。果たして日本の市場でここからどのくらい支持層を拡大することができるか、注目に値する。