ディーゼル自動車の乗り心地は

丹波高地の森林地帯を縦貫する国道477号線。急勾配や連続カーブではディーゼルエンジン特有の粘り腰が生きた。

ボルボの場合、加速力を目いっぱい引き出せるよう1速から3速まではガソリン車並みに低いギア比、その上の4~6速が郊外一般道を、7~8速が高速道路や高規格幹線道路を燃費良く走るために低い回転数で走るハイギアード設定になっている。そのため、停止時からのスタートダッシュをはじめ、多くの局面でエンジンの持っている性能を目いっぱい引き出しやすい。一般道、高速道とも制限速度が欧米に比べて格段に低い日本の道路への適合性の高さは、国産勢のマツダを含めてもトップクラスと言えるものであった。ちなみに8速・100km/h巡航時のエンジン回転数は1500rpmを少し切ったくらいであった。

草津からは京都市街を通る国道1号線ではなく、京都北方に広がる丹波高地を抜ける国道477号線を経由して山陰方面へと向かった。杉や檜の大森林を細い道が縫うように走る荒れた道路で、鞍馬天狗伝説が生まれたのもわかるような神秘的な雰囲気が漂う場所だ。山岳路であるため、きつい急勾配や加減速を繰り返すS字カーブが延々と連続する。

ボルボの新型ディーゼルはそのような道において、とても良い粘りを見せた。ターボ車はカーブで減速した後に再加速するようなとき、スロットルを踏んでから有効なパワーが出るまでに少し遅れがあるのが常なのだが、ボルボのエンジンはその後れがきわめて小さく、自然かつリズミカルに山岳路を駆け抜けることができた。

丹波高地を抜けると、そこはのどかな京北の山村。水が良いことで知られ、太古から京都の御所の一大食料供給源となっていたと伝えられている。その道端に、裏手の畑で栽培した蕎麦を手打ちで出すという蕎麦屋を見つけたので入ってみた。通過日は30度台後半という猛暑であったが、それでもテラスで外を見ながら冷たい蕎麦を食べるのは気持ちがいいものだ。最初の一口は汁をつけずにそのままいただいてみたのだが、新蕎麦の時季ではないにもかかわらず甘味が豊かで、とても美味しく感じられた。

山陰に入ってからは鳥取砂丘を過ぎた後、ちょっと寄り道をして境港の水木ロードへ。ここは漫画家・水木しげる氏の作品に出てくるキャラクターがストリートじゅうに絵やオブジェとして飾られている名所である。到着したのが日暮れ時だったこともあって、通りは人影もほとんどない。NHKの朝の連続ドラマで水木しげる氏とその細君の物語「ゲゲゲの女房」が放映された時に注目を浴び、一躍人気スポットとなったのだが、観光客が姿を消す時間になると、厳しい過疎の現実が露になる。ただ、地方の港町のひなびた雰囲気を味わいたいといった風情派にとっては、夕暮れの時間帯はおすすめだ。近くにある中海が薄暮の紫に染まる様もとても美しい。