代表は"橋下発信力"を活用できる人

【塩田】維新の党は、創始者の橋下徹・大阪市長が政界引退を表明し、一方で、党内の「大阪組」と「東京組」との確執がしばしば話題になります。維新が向かうべき方向は。

【下地】大阪は「大阪の維新の維持」、東京は「政界再編成」です。政界再編は民主党との連携で、連合との関係修復ということになりますが、大阪都構想を否定した政党や勢力と連携して、東京の枠組みで政界再編するのかという疑問は、誰もが持ちますよね。

私は政界再編成ではなく、4~5のシナリオを持つべきだと考えています。まず来年の参院選で、維新は公明党を抜いて参議院で自民党、民主党に次ぐ第3党になる。次の総選挙で民主党を抜いて、衆議院で野党第1党になるというステップを踏む。次の次の総選挙で、維新と民主党を合わせて 180議席にする。

そうやっているうちに、東京オリンピックが終わります。オリンピックが終わらないうちに、政治家が政治や政党を変えようと言っても、国民はそうは思わないのではないか。

今はこれまでやってきたことをしっかりアピールして、維新の存在感を示し、保守野党の姿を出していく。国民はそう簡単には政権交代させてくれません。それが1993~94年の非自民連立政権と、1回の総選挙で終わった民主党政権から得られる教訓だと思います。維新の党の中では政界再編成という言葉はあまり言わずに、まず国民が面白いと言ってくれる維新の党をつくり、自分を磨く作業をやっていく。それが私の立場です。

【塩田】政界引退を表明した橋下さんの国政進出を期待する声が根強く存在しています。

【下地】橋下さんほどの発信力がある人は、維新だけでなく、政治家の中にいるでしょうか。小泉さんに匹敵するパワーです。ツイッターを打つと、何十万の人が見る。こんなことはほかにない。維新は、政治のど真ん中にあの人を引っ張ってきて初めて大きな力になります。去年暮れの総選挙の比例区の得票を見ると、維新は橋下さんで 840万票を取ったんですよ。民主党は連合という組織があって 980万票、自民党はあらゆる各種団体が付いていて1700万票余なのに、橋下さんは何もなくて、一人で 840万票ですよ。この発信力の強さを活用する人が維新の代表でなければ駄目だと思っています。

(このインタビューは2015年の8月7日と20日に行いました)

下地幹郎(しもじ・みきお)
衆議院議員・維新の党・元国民新党幹事長・元内閣特命相
1961年8月、沖縄県平良市(現宮古島市)生まれ(現在、54歳)。父・下地米一は元平良市長。沖縄県立宮古高校を経て、中央学院大学商学部商学科卒。父が創業した大米建設に勤務した後、1996年総選挙に沖縄1区から自民党公認で出馬し、比例九州ブロックで初当選(以後、当選5回)。自民党では小渕派に所属した。2003年総選挙で落選した後、自民党を離党。05年総選挙に沖縄1区から無所属(民主党推薦)で出て返り咲いた。地域政党「そうぞう」を結成して代表に就任するが、08年に国民新党に入党。10年に幹事長となる。12年10月に野田佳彦内閣の内閣府特命担当相に。だが、12月の総選挙で落選し、13年に国民新党を離党した。14年11月の沖縄県知事選挙に出馬して落選。14年総選挙に維新の党公認で出馬して復活を遂げた。著書は『サトウキビ畑からきた大臣―郵政と沖縄をめぐる連立政権三年三ヵ月』『解決―沖縄ミッション 米軍基地過重負担の漸進的軽減』など。
(尾崎三朗=撮影)
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