「ブランド・パワー」を用いる3つのメリット

ブランド・パワーの概念を用いることによって、第1に、ブランドという場の変化をいち早く捉えることができる。第2に、パワー低下現象の原因を見きわめることができる。そして第3に、原因の違いによって打つ手を選ぶことができる。この3つがカギである。

ブランド・パワーの概念がないとしよう。その場合、ブランドの変調はその売り上げの変調によって見つかる。そして、売り上げの変調の原因が探られる。いろいろの原因が挙がってくる。製品の機能や品質から始まって、パッケージやコミュニケーションの局面まで、ブランドの売り上げ変調の理由を考えだすと、候補はいっぱいある。その結果、「全面変更」という答えが出てきてしまう。

それに対して、ブランド・パワーの概念をもてば、問題の拠ってきたる原因をきちんと見きわめ、それに即して打つ手を選ぶことができる。ピンポイントでの対応が可能になる。

前回、「営業効率を上げる『市場プロセス・マネジメント』」と題して、「顔の見える顧客」を相手とした営業プロセス・マネジメントの話をした。今回は、「顔の見えない顧客」相手のプロセス・マネジメントの話をしてきた。

顔の見えない顧客、つまり不特定多数の消費者を相手にした事業において、プロセス・マネジメントを実施するには、ブランドという媒介・媒体を使うしかない。ブランドという消費者との「交流の場」をつくる。そして、その場が、時間とともにあるいは競合相手と比べて、強化されているのか弱っていっているのかを見きわめること、これがプロセス・マネジメントのカギだ。

体調を測るために、体重や血圧という尺度が用いられる。それらの変化は、体調変化のバロメーターである。それと同じように、ブランドの場の健康を記述するのに認知度や理解度といった少数の要素が用いられる。それの最大のメリットは、それによって改善すべき点がピンポイントで明らかにされる点にある。

(1)消費者と長期にわたる「交流の場」となるブランドを構築すること、(2)ブランドの健康診断を行うこと、そして(3)悪いところがあればそこだけをピンポイントで改良していくこと、こうしないことには、成熟期に必要な効率的なマーケティングが行えない。プロセス・マネジメントの効能はここにある。