正社員、非正規社員の格差を是正し、若者の早期離職を防ぐ術──。筆者は、正社員の働き方や人材マネジメントのあり方を再考すべきだと言う。
格差社会に繋がる「中核―周辺モデル」
「正社員―非正規社員格差」「ワークライフバランス」「3年(以下)で辞めてしまう新入社員」の3つの話題に共通するテーマは何なのだろうか。1つひとつ見てみよう。
まずは「格差」。今や“国民的関心事”になった格差論を、働くという視点で考えると、当然議論されなくてはならないのは、非正規雇用の問題である。いや「非正規」という言葉さえ使ってはいけないという主張もあるぐらいだ。それほどまでに多くの人が、パート、派遣、請負などの、非正規労働者の状況に敏感になっている。
多くの調査が示すように、長期雇用を維持する方針をもつ企業の大半は非正規社員の拡大を伴っている。この結果、安定雇用の正社員と不安定雇用の非正規社員という2分法がますます強まることが予想される。つまり、雇用の観点からすれば、伝統的な「中核―周辺モデル」を強化する帰結が、「格差社会」に繋がる。
したがって、「格差社会」の是正が必要であることは明らかだとしても、中核―周辺の2分化が正社員の長期雇用を維持することの結果である以上、日本の雇用システムはジレンマに突き当たる。前回も述べたように、これまで日本の企業の強みの多くが、正社員の働き方と高いコミットメントに依っているからである。
次が、ワークライフバランス。これは、問題というよりは、課題といったほうがいいかもしれない。多くの企業で、長時間労働を是正し、仕事と生活のバランスをとり、働く人の就労と、子育てなど家庭内役割との両立を図っていこうとして導入される施策である。そして、その結果、男性も育児休業を取得するようになってほしいし、あわよくば、少子化への対策になってほしい……。そんな思惑も見え隠れする。
だが、女性が子供を生む機械ではないように、企業は少子化対策の道具ではない。したがって、企業も、人も、ワークとライフをバランスさせることが有利だと考えないと、そうはしないだろう。どんなに男性の育児休業取得を推進しようとしても、多くの男性にとって、育児休業をとって、キャリアを中断することは、決定的に不利になるのである。
最後が、今、新入社員研修の真っ只中、昨年度からの大量新卒採用のなかで、人事部員の心に暗い影を落としている問題。そして、現場のマネジャーにとっても大きな不安材料である問題。そう、「3年(以下)で辞めてしまう新入社員」である。