なぜ、若者が早期で退職してしまうのか。諸説紛々である。たとえば『若者はなぜ3年で辞めるのか?』(光文社)で城繁幸氏が述べていることを、私の言葉で言い換えれば、中途半端な成果主義と年功序列の残存が若者から希望を奪って、その結果、早期退職に追い込まれるという。
確かにそうなのかもしれないが、では、なぜ一昔前までの、年功序列の最盛期には、こうしたことは問題にならなかったのだろうか。さらに、果たして本格的な成果主義を導入し、成果で人をきちんと評価し、処遇することが、働く人の定着に繋がるのだろうか。逆に、働く人が企業ともっとドライな関係を形成し、定着率が低下する可能性もある。求められているのは、もっと根本的に魅力ある働き方であろう。
こうした幾つかの問題の背景にあるのは何なのだろうか。私は、こうした問題の背景は、「正社員」という働き方が、今の社会と不適合を起こしており、正社員の働き方に柔軟性と多様性を持ち込まないと、多くの雇用改革は難しいのではないかと思っている。
では、正社員とは何なのか。実は、不思議なことに、正社員という言葉に正確な定義はないのである。最も一般的な定義は、雇用契約として、会社と雇用期限の定めがない雇用契約を結んだ従業員のことをいう。
逆に非正規社員とは契約社員、派遣社員、パート社員などで、彼らは有期の雇用契約を結んでいて、雇用契約満了後の身分の保証はされない。だが、実際にはパートタイマーと呼ばれる人に期間の定めのない例もあり、それだけでは説明できないし、正社員といえども、定年制があることがほとんどなので、事実上定年までの有期雇用という見方もできる。
したがって、雇用期間で分けるのは必ずしも厳密ではない。他の要因を考えて、結局、両者を厳密に区別するのは難しいのである。
でも、私たちにははっきりわかる。職場では区別があるのである。少し前に話題になった「ハケンの品格」というドラマでは、テレビらしく誇張されてはいるが、明確に、そこにいるすべての人が、派遣社員と正社員の違いを理解していた。単に雇用契約の違いだけではない。そこにある働き方の違いや、職場として期待できること、できないことまで。