高齢化により、病院の患者獲得合戦が繰り広げられている。産業界が経営に乗り出すケースも増えている。患者満足の向上、医療の質の向上、無駄なコストの削減という3つの課題をどうやって解決するか。筆者は、新しい手法を提案する。

経営改善の定番である「計画制御」という手法

われわれは、調査、計画、実行、評価という枠組み(=計画制御)に慣れ親しんでいる。調査し、それに基づいて計画を立て実行に移し、そしてその結果を評価するというサイクルは、計画制御と呼ばれる方法である。ビジネス世界での基本的作法でもある。しかし、実際、それでうまくいくのか。いくつかの病院の経営改革の事例を検討しながら、この問題を考えてみよう。

現在、多くの病院は、これまでになかったような厳しい環境に置かれていて、患者満足の向上、医療の質の向上、そして無駄なコストの削減という3つの課題の克服を目指し、経営改革を進めている。そのために、患者、医師、職員、さらには地域の住民のさまざまな意見を集めて役立てようとする病院も少なくない。お客さんや自社の従業員から経営における不具合を聞き、それに対処することは経営改革の第一歩だ。その考えを推し進めれば、顧客満足調査や従業員満足調査を軸とした顧客満足プログラムにたどり着く。その手法は、いわばサービス企業の経営改善のための定番だ。

顧客満足プログラムは、まず自社の顧客への質問票調査から始まる。そのサービスを知っているかどうか(認知)から始まって、態度、購入意図、購入経験などを、顧客に聞く。病院なら、受け付けでの対応から始まって、診察、看護、調薬、入院設備、医療機器等々、さまざまな局面について質問が重ねられる。あるいは、外来患者にも入院患者からも、患者の家族からも意見が集められる。

病院のスタッフにも調査が行われる。患者満足の改善のために、患者やその家族に直接応対する病院のスタッフが生き生きと仕事をしていることは大切なことだ。医師や看護師や職員たちが、どこに不満を感じ、どこで効率の悪さを感じているのかを調べることは、患者満足のためにも必要だ。加えて、医療の質を高め、無駄なコストをなくすためにも、現場従業員の意見を聞くことは必要だ。サービスの出し手と受け手、両者の意見を聞いて経営改革の方向が見えてくる。

ところが、これらの調査分析に従って、病院経営の改革計画を導き出すとなると話は少々違ってくる。それは最初に述べた計画制御の方法にほかならないが、それで改革はうまく進むのか。どういうやり方になるのか、ざっと見てみよう。