日本ではグローバルエリートが育たない

世界展開する日本企業に勤めても世界で通用しないのは、赴任先の環境だけが問題なのではありません。他にも構造的な理由が考えられます。

まず大きいのは、マネジメントの方法論がガラパゴス化しているという点です。

世界の優秀なグローバル企業は社内にドリームチームを抱えています。ドリームチームに集うメンバーはそれぞれバックグラウンドが異なるため、分析の手法や議論の進め方、意思決定の枠組みなど、仕事の「共通言語」をマスターしたうえで一緒に働きます。

ひるがえって日本はどうでしょうか。日本には、日本独特の行動様式があります。たとえば海外企業にはジョブディスクリプション(職務記述書)があって一般社員はその範囲の仕事しかしないのが普通ですが、日本には明確なジョブディスクリプションがなく、自分の守備範囲外のことも進んでやる文化があります。

こうした行動様式は日本の文化や価値観から派生したものですが、さらに日本企業はおのおのが独自に大切にしてきた暗黙知の体系を持っています。たとえば会議で座る位置に何か決まりがあったり、飲み会での支払いのルールが伝統的に決まっている会社もあります。会社ごとに「常識」が違うのです。

各社の常識が違うのは、日本企業が長らく終身雇用・年功序列で運営されてきたからでしょう。終身雇用だと人の流動性がなく、人の流動性がないと知識の交換も行われません。その結果、各企業がそれぞれにガラパゴス的に発展して、固有の暗黙知の体系をつくりあげてきたのです。

各企業固有の行動様式は、もともと独自性が強い日本文化の上に、さらに企業独自の暗黙知の体系が乗っかって形成されてきました。そのため日本のビジネスパーソンの働き方や考え方は、世界標準とはズレたものになっているわけです。