現場が負うべき責任とは何か

最近は、結果さえ出せばプロセスは問わないという風潮があるようですが、私は結果を出すにはプロセスこそが大事だと思っています。私たちが取り組む整流活動とは、まさに正しいプロセスを踏むことで理想の状態に近づける活動でもあるのです。会議ではいつも、プロセスを徹底的に追及します。現場は正しいプロセスを踏んだのか、やるべきことをやったのか、もしそうでなければ真剣に叱ります。社員も辟易するくらい、執拗に問い詰めます。その代わり、結果が悪くても、私は現場の担当者を叱りません。

なぜなら、プロセスこそが現場が負うべき責任だからです。そして、現場が正しいプロセスを踏んで結果を出せるよう、指導しサポートするのは管理者の務めです。ところが、プロセスには一切関与せずに、結果だけを現場に求め、結果の責任までも現場に押しつける管理者や経営者が世の中には非常に多い。東芝の粉飾事件を引き起こした真の問題も、そこにあったのではないかと思います。トップの見栄や保身のために何よりも結果を優先し、現場に過大な結果を求めた。そのツケがあのような巨大粉飾事件を招いてしまったのではないでしょうか。

期待どおりの結果が出ないときは、現場のプロセスの管理を怠った管理者や経営者の責任です。決して現場の責任ではありません。それを間違えてはいけないと思います。

川田 達男(かわだ・たつお)
セーレン会長兼最高経営責任者
1940年、福井県生まれ。62年明治大学経営学部卒、同年福井精練加工(現セーレン)入社。87年社長就任。2003年より最高執行責任者(COO)兼務。05年より最高経営責任者(CEO)兼務。05年に買収したカネボウの繊維部門をわずか2年で黒字化させる。14年より現職。セーレン http://www.seiren.com/
(前田はるみ=構成)
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