年収のほかに、役員退職金も3億円以上
三菱電機でもうひとつ気になるのは、いまだに役員退職慰労金が残っていることである。退職慰労金は、年功的報酬の最たるものであり、その一般的計算式は、
役員報酬月額×在任年数×功績倍率+功労加算金=役員退職慰労金
である。功績倍率は会長・社長が3.0倍、専務2.5倍となっており、功労加算金は退職慰労金の30%を超えない範囲とされている。
ちなみに三菱電機は「(役員の)退任慰労金については、報酬月額及び在任年数等に基づき定めることとする」と記載している。具体的にはわからないが、単純に上記の計算式に従えば、
役員報酬月額1000万円(年間1.2億円)×在任年数10年×功績倍率3倍+功労加算金
で、3億円を優に超える額となる。
従来の日本企業の役員報酬は固定報酬と退職慰労金で占められていた。だが、年功だけで決まる退職慰労金は役員の職責や業績とは無関係であり、廃止すべきと言う株主の声が高まり、廃止する企業が増えている。
もうひとつ、社員側からの批判として、役員になる前にすでに社員の退職金をもらっておきながら、役員になって再びもらうのかという二重取り批判もある。
現在では退職慰労金がある上場企業は約4分の1。残りの4分の3は廃止したか、もともとない企業である。
執行役全員が年収1億円以上の三菱電機がいまだに退職慰労金を残している理由は明らかにされていないが、役員報酬制度のあり方として疑問が残ると言われてもしかたがないのではないか。
また、賞与についても透明性を高めるために業績連動型賞与を導入し、そのウエイトを増やす企業も徐々に多くなっていると言われる。だが、それでも報酬に占める業績連動型賞与の割合は2~3割程度であり、米国企業の7割に比べると低いとされる。
一例をあげれば、報酬ランキング14位の信越化学工業の金川千尋会長の報酬は5億3800万円。賞与1億3200万円に対し、固定報酬は4億円超であり、報酬全体の賞与の比率は3割にも満たない。