そして東進は、「教育とは人を育てること」だと考え、生徒の夢を育み、志へと高める指導を大切にしている。そこから生じるモチベーションの向上は、生徒の日々の学習の継続をうながし、これが学力の向上にもはねかえっていくのだという。そこで東進では、5~6人の生徒グループを編成し、担任助手の指導のもとで毎週のミーティングを行う制度を導入している。こうしたコーチングの場としても、教室は欠かせない。

東進は講義配信のみならず、これを学習効果にいかにつなげるかを真剣に考えてきた。だからこそ、ネットとリアルの組み合わせにこだわる。その成果として、数々の一流大学への進学者数を伸ばしてきたことが、現在の東進への評価につながっている。

人口減少社会では、多くの市場が縮小に向かう。受験市場も、その例外ではない。だが、このような市場にも、巨大な未開拓の需要が残存していることがある。ITの進化を活用すれば、かつては効率的に対応できなかった、分散した需要をつなぐことも可能である。この可能性の活用を、受験サプリは示している。

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インターネットの活用による、複合競争の高度化

とはいえITは、価格破壊だけのツールでもない。あるいは、リアルの教室や実店舗での業務を根絶やしにするためのツールでもない。確かに、教室や店舗の役割を見直す必要はあるわけだが、インターネットと組み合わせれば、リアルだけでは実現できなかった高付加価値サービスを実現することも不可能ではない。東進は、この可能性を追求している。

縮小に向かう市場の中で、ITを駆使した価格破壊型と高付加価値型の新たな事業が競い、成長する。この複合競争が教育産業で高度に展開していることは興味深い。

(平良 徹=図版作成 共同通信イメージズ=写真)
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