リアルだけでは実現できなかった高付加価値
躍進する受験サプリ。だが3000億円規模の予備校市場の中で、受験サプリはまだまだ小さな存在である。オンライン予備校という範疇で見ても、受験サプリは受講者数でナガセの後塵を拝する。「少子化時代の勝ち組」とも評されるナガセの中核は「東進ハイスクール」と「東進衛星予備校」(以下、東進と略す)。受験サプリが価格破壊型であるのに対し、東進は、全国1000校体制でオンラインとリアルのハイブリッド型の事業を展開する。
東進は、1990年代から授業の映像化とライブラリー化を進め、現在ではすべての授業を衛星配信している。この方式は、部活動などで忙しい高校生も、1人1人の学力、スケジュールに応じて、教室や自宅などで学習を行うことを可能にする。
「合格に必要なすべての学習を提供する」というのが東進の方針。東進は、多彩な講座を提供するだけではなく、1回1回の授業ごとに生徒の受講履歴と確認テストの成績を分析し、授業内容の改善を繰り返してきた。この取り組みが、きわめて効率よく学力を向上させる体系的なカリキュラムを生み出している。加えて東進は、受講後に電話やオンラインでの質問票のやり取りに応じる体制をしっかりと整えている。
では、なぜ東進はリアルの校舎や教室網の拡充も続けているのだろうか。それは、「絶対合格」を請け負うという基本姿勢を貫くには、単に講義動画を配信するのでは不十分だと東進が考えているからである。
東進の指導に欠かせないとされるのが、担任指導である。担任は、受講生と定期的に面談を行い、志望校をめざした最適な学習方法を一緒に考える。東進がラインアップしている講義動画は、膨大な数にのぼる。これを気ままに、つまみ食いするだけでは、学習効果は上がらない。受験全科目を網羅し、週ごと、日ごとの中間目標を確認しながら、部活や学校行事との両立をはかりつつ、毎週同じペースで学習を進めていくことも必要だ。的確な学習計画が欠かせないわけで、これを教室における担任指導が支える。