ネットが生み出す価格破壊型のマス市場
受験サプリの開業にあたって、リクルートが注目したのは、地方の受験事情だった。有名予備校は大都市部を中心に立地しており、全国ベースで見れば、大学進学を志願する高校生のうち、従来型の予備校への通学者は3割程度に過ぎない。その背景には、時間の問題に加えて経済的な事情もある。
インターネットは、分散した需要を効率的につなぐことで、かつてはありえなかったマス市場を生み出す。毎年の現役大学進学者数は、現在では60万人程度。従来型の予備校が、その3割程度しかカバーしていないのであれば、受験サプリが数万人規模、あるいはそれ以上の有料会員を獲得することは、不可能な話ではない。この可能性を受験サプリはものにしつつあるわけだ。
とはいえ、インターネット上では、参入障壁が低い。競争が激化し、価格下落が止まらなくなるという問題が生じやすい。
これについても、受験サプリには備えがある。まず、従来型の予備校については、すでに教室や校舎などに、まとまった投資をしてしまっている。よほどのことがないかぎり、価格破壊型のオンライン予備校という、これまでの投資の前提となる料金体系を脅かす事業に乗り出してくることはないはずだ。
もうひとつの競争問題は、産業の外部からの参入。リクルート自身が、インターネットを活用することで予備校産業への新規参入を果たしたのだ。資本力がありITに通じた企業であれば、同じような事業を容易に開始できる。
この新規参入問題についても、受験サプリは防波堤を完成しつつある。すでに受験生の間での受験サプリの知名度は高い。先行投資的な広告投下もあいまって、受験サプリの無料会員は30万人にのぼる。大学進学者の約半数に浸透している受験サプリのブランド力を考えると、今後の新規参入組は苦労しそうだ。