引退時に「感無量です」と言える働き方
渡辺流、野球と他のボール競技との相違点についての見解が興味深い。
「多くのボールを使うスポーツはボールそのものの得点を競う。サッカーもバスケットもテニスも。だが野球は人がホームに生還して得点を競う。その得点を阻むのも人。ボールを媒介して切磋琢磨し、人同士の会話を続けていこうじゃないか、と思える」
野球はドラマが多い、などと言う。ボールがラインの内か外かでスコアになるのではなく、人がアウトやセーフになってスコアになるからなのかもしれない。三振もエラーもミスは誰だってする。ミスは生きているから、動いているから生まれてしまう。野球が生きているように。ビジネスシーンが動いているように。人が主役なのだ。
「教育をするのが高校野球。選手ではなく人を育てる。指導者はどんな時でも子供の側に立ってやらないといけない。最終的には人が人を動かす」(神奈川新聞5月16日付けインタビューより)
「感無量です」
80年の優勝インタビューでの第一声。すべてのビジネスマンがひと仕事終えた時、しみじみ、言ってみたい言葉ではないか。
※参考文献 『高校野球って何だろう』(渡辺元智 報知新聞社)、各一般紙、スポーツ紙各ウェブサイト