手に持ったときの感覚だけでなく、見た目にも正しいポジションを知らせるのが、ペン先に見える「えがおのマーク」です。書くときにこのマークが書き手に微笑みかけるような向きになるよう刻印しました。ここには「万年筆で書くことが楽しくなってほしい」という私たちの願いも込められています。

また、一般的に万年筆のキャップに付いているクリップは外しています。ペンケースにたくさんの筆記具を入れている子どもの場合、クリップがあると収まりが悪くなり、かえって邪魔になると考えたからです。

余分なパーツを削ぎ落とすことは、コストダウンにもつながります。クリップを外すことだけでなく、生産工場、企画部、デザイナー、販促が一体となって合理性を追求しなければ、「1000円で買える万年筆」は実現しません。材料にしても金属部分のペン先以外はすべて樹脂を使い、金輪もなくしています。構成要素はシンプルに、キャップ、インナーキャップ、ペン先、ペン芯、首、軸の6部品のみ。カラーバリエーションを増やすとその分だけコストが上がるので、軸はグレー1色で統一し、カラフルなキャップで好みの色を選べるようになっています。

ペン先の金属部分には3000円の万年筆「コクーン」で使っていた型を使用することでコストダウン。こうして本格的な書き心地を損なうことなく、1000円で買える万年筆は実現しました。

発売1年強で累計販売数100万本を突破

2013年10月の発売から半年で、万年筆としては異例の累計販売数30万本を突破。14年2月には白軸タイプの4種を追加し、計10種のバリエーションで展開。15年1月現在、累計販売数は100万本以上。14年度グッドデザイン賞、キッズデザイン賞審査委員長特別賞を受賞。

 
斉藤真美子(パイロット 営業企画部)
1992年、パイロットコーポレーション入社。百貨店などの高級筆記具売り場で店頭販売を担当。「カクノ」のほか、20~30代をターゲットにした万年筆「コクーン」から高級蒔絵万年筆まで、幅広い商品を手がける。現在、高級筆記具企画グループ主任として万年筆などの商品企画に携わる。
(構成=矢倉比呂 撮影=佐藤新也)
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